今年の新入社員の26.4%が「チャンスあれば転職」と考えているという記事を今朝の日経新聞で読みました。
東京商工会議所が今まで行った調査で26.4%というのは、記録が残る1998年以来最高なのだそうです。「定年まで働きたい」の21.1%を上回って、「チャンスあれば転職を」狙う新入社員が4人にひとりいることになります。
興味を持ったので調査概要を読んでみました。
このリサーチは4月2日(火)から5日(金)までにネットで行われ、約千人から回答を得ました。東京商工会議所で新入社員研修を受けた新入社員が対象です。
1)就職活動が順調であったと回答した人が、62.2%。
2)理系が68.5%、文系が62.2%、就職活動は順調だった。
3)大卒の内定取得企業数は、理系で2.31社、文系で2.2社。
4)就職先の会社でいつまで働きたいか?の問いに対して、「定年まで」は21.1%だった。
10年前の2014年度調査(35.1%)と比べて14ポイント減少。また、「チャンスがあれば転職」は26.4%。10年前の2014年度調査(11.9%)と比べて14.5ポイント増加。東商によると、新入社員は「長期勤続志向」が低下し「転職志向」が高まる傾向にあると分析しています。
5)就職先の会社を決める際に重視したことは、「処遇面」「社風、職場の雰囲気」「福利厚生」が上位。
処遇や待遇面が就職先の決定要素とされているが、「やりがい」や「自分の仕事に対する志向性」「職業と自分とのマッチング」の要素がまったくないのは、リサーチの設問にないためかと思われます。複数回答可の設問にこれらがないのは不思議でした。
6)就職先を決める際に「誰の意見も重視していない」(31.2%)が最多、「親」(30.6%)がそれに続く。
7)社会人生活で不安に思うことは、1位「仕事が自分の能力・適性にあっているか」、2位「上司・先輩・同僚とうまくやっていけるか」、3位「ワーク・ライフバランスがいいか」。
8)入社時点までに身につけたスキル・知識は、「ビジネスマナー」と「パソコン・スキル」が上位。
ちなみに企業は、新入社員以上にこれらのスキル・知識の要求水準が高い。特筆すべきは企業は「経済社会に関する一般的な知識」を新入社員が思う以上に上回っている。つまりは新入社員は「経済社会に関する一般的な知識」に乏しいと感じているようです。
「理想の上司」のイメージに近い著名人は、1位が「大谷翔平」さん、歴史上の人物で「理想の上司」のイメージに近い著名人1位は「織田信長」でした。
「織田信長」・・・。私はもっとも仕えたくない上司にあげたいところですが・・・。
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2024年度新入社員意識調査を読んでみて思うのは、「就職活動が順調である」時代背景と、その恵まれた環境下では「転職」もまたたやすいことのように思っている新入社員が多いのではないかということです。TVのプライム・タイムでは転職エージェントのCMが流れ、ネットでも転職エージェントの広告にふれる若者たちです。オイルショックやリーマンショックの頃に若者であった人々と「転職」をとりまく環境は大いに異なっています。
「転職」に求めるもの。それは何でしょうか?
全体を通して、やや受動的に感じられることと、あまり主体的に仕事に向かっていこうという感じがしてこないのは、そもそもこのネット・リサーチの設問に起因するものなのでしょうか?あるいはリサーチの対象者に起因するものなのでしょうか?
それは、この調査結果からはみえてこないものです。
そもそも「定年まで働きたい」と思っても、これからは定年まで働けない人々が少なからずでてくるはずです。
仮に処遇や待遇が今良かったとしても、人間の寿命より企業の寿命ははるかに短くなっています。
だからこそ、新入社員にはこれから仕事人としてのチカラをつけていくことが求められるでしょう。
「稼げるチカラ」があれば、処遇や待遇も自ら望むような環境下で働いていけるでしょうから。
オイルショックやリーマンショックで仕事に就くことが困難だった人々は、今どのように感じているでしょうか?
この意識調査を読みながら気になっていたのは、そのことでした。