88歳のクリント・イーストウッド 90歳の「運び屋」を演じ監督も

88歳になったとき、あなたは何をしているでしょうか?

88歳で『運び屋』(2018)という映画を製作・監督し、同時に主人公である90歳の実在の運び屋タタを演じた人、それがクリント・イーストウッドです。91歳の時には製作・監督・主演で『クライ・マッチョ』(2021)を公開しています。2024年の今、彼は94歳です。また新しい彼の映画を観たいものです。

それにしても、すごいと思いませんか?

クリント・イーストウッドに「老後」はあるのでしょうか?

年齢のことを中心に述べましたが、クリント・イーストウッドを偉大な映画人として、またひとりの人間として、私はとても尊敬しています。

もちろん1971年に公開されたドン・シーゲル監督の『ダーティーハリー』。そこから始まるシリーズで、アンチ・ヒーローであるハリー・キャラハン刑事の彼に魅了されました(日本公開:1972年)。それはしかし、俳優としてのクリント・イーストウッドに魅了されたということに留まりました。吹き替えの山田康雄さんの声とハリー・キャラハン刑事を演じるイーストウッドは、私の中で一つの存在でした。

しかしそれから彼は監督業に進出しました。2004年に『ミリオンダラー・ベイビー』で74歳にして2度目のアカデミー作品賞・監督賞のダブル受賞を果たした頃から、私のイーストウッドに対する見方はかなり変わっていきました。

決定的だったのは2006年に公開された『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』でした。

イーストウッドが製作・監督を務めたこの二作品を観て、高齢のクリント・イーストウッドが、よくもまあこのような大作をものにしたということに驚嘆しました。この『硫黄島2部作』は、イーストウッドの傑出した演出力と共に、常識的な年齢の壁を越えて映画をつくるイーストウッドに対して、畏敬の念を覚えるようになりました。

彼の映画は若々しくてしかも端正、リズムといい抑制の効いた演出といい、素晴らしいものがありました。

そして2008年の『グラン・トリノ』。そして監督した2014年の『アメリカン・スナイパー』。

2016年の監督作『ハドソン川の奇跡』を経て、2018年で監督作品にして主演作品となるこの『運び屋(The Mule)』。

90歳の主人公アール・ストーン(愛称:タタ)を演じる彼の風貌は確かに衰えています。

しかし、一言でいえば、カッコいい。

いぶし銀の魅力といいますか、いぶし銀を越えて、カッコいい。

きっと彼はモテるだろう。そう思わせるカッコよさです。

そして情けないけれども憎めない。飄々とした90歳。

家族に対する生涯に渡る悔いを彼は抱えています。家族からの疎外感に悩むイーストウッドの姿は心を打ちます。それを何とか変えていこうとする彼の行動に、この映画のドラマは思わぬ方向へと動き出します。

いくつもの印象的な場面がありますが、しかしここでは控えましょう。

この映画でおそらくクリント・イーストウッドは、人生で最も大切なものは何か?を語っています。

それをこの映画を観ることによって、味わっていただけたらうれしいです。

私たちにとって、88歳という年齢は、ほとんど未知の世界です。88歳にして魅力的な人間である彼の姿を前にして、深く考えさせられるものがありました。

飄々とした佇まい。お洒落な姿。しかし頑固な信念。デイリりーを愛でる園芸家・・・。それらがカレイドスコープのように、キラキラとこの映画の中に収められています。

ちなみにデイリリーは、ギリシャ語で「一日の美」を意味するヘメロカリスという花の英名で、一日で花がしぼむそうです。花言葉は「宣言」「苦しみからの解放」「憂いを忘れる」だそうです。

私たちは、どのように生きていけばいいのか?

その答えを、クリント・イーストウッドは彼の映画を通じて語っているのでしょう。

彼曰く「学ぶことに年齢は関係ない」。

そうであるならば、私たちは精一杯今を生きることに集中しなくてはなりません。

この『運び屋』のテーマ曲は、そのようなことを感じさせます。老いている暇は、ないのですから。

シンガー・ソングライターのトビー・キースに「若さの秘訣は何か?」と尋ねられ、イーストウッドはこう答えました。

「絶対に年寄りだと思わないことだ」と。

そこから、この曲が生まれたそうです。

「Don’t Let the Old Man In」。老いを迎えいれるな、と。

クリント・イーストウッド監督作品 映画「ハドソン川の奇跡」:サレンバーガー機長のキャリアの危機

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この記事を書いた人

大前 毅のアバター 大前 毅 国家資格キャリアコンサルタント
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