【転職の魔王様】1 小芝風花さん演じる25歳未谷 パワハラ克服宣言

TVドラマ(月10)「転職の魔王様」第1話では、25歳の未谷千晴(ひつじたに・ちはる/小芝風花さん熱演)がパワハラで離職して、紆余曲折を経て転職エージェント「シェパード・キャリア」の見習いとして働くことになる経緯(いきさつ)が描かれます。転職の魔王様と呼ばれるキャリアアドバイザー(略してCA)、来栖嵐(くるす・あらし/成田凌さん好演)が未谷を担当するのですが・・・。

実は私は観ていて辛かったです。そのせいで第4話までパスしてしまいました。しかしこの第1話の未谷千晴さんが遭遇したパワーハラスメントはスキップできないテーマでした。

第1話の来栖嵐の言動は正直突っ込みどころ満載で、来栖と同じ(?)キャリアコンサルタントの私としては、ここではあえて来栖の言動にふれずに記事を書くつもりです。クールな彼のいい面を私は尊重します。回を重ねる毎に、成田凌さんのクールな演技は転職の魔王様の魅力となって、とても楽しめるドラマになってきています。

「シェパード・キャリア」は迷える子羊を導く転職エージェント。未谷はその名の通り迷える子羊で、パワハラで人生の道を見失い、転職活動を始めるにあたって叔母の落合洋子(石田ゆり子さん好演)が経営するこのエージェントを訪ねるところから物語は始まります。

第1話は未谷がパワハラのトラウマ克服のきっかけをつかむ回でもあります。「それぐらい自分で決めてください」。そんなタイトルがつけられています。転職の魔王様・来栖の言葉です。未谷のケースでは、パワハラと自己認識・自己理解ということについて考えてみたいと思います。

●自分ではパワハラと認識できないこともある。

●自己理解は新たな行動の第一歩になる。

●パワハラに対して、どう対処したらいいのか?

それではみていきましょう。

パワハラは決して他人事ではありません。残念ですが至る所でパワハラは起きています。個人ひとりで解決することは難しく、組織の課題として取組むべきテーマです。しかし未谷千晴は、自分自身がパワハラに遭っているということを、果たしてどれほど認識していたでしょうか?本人も意識化できなかった理由とは何なのでしょうか?

私はキャリアカウンセラーとして11年間に約2万回程キャリア面談をしてきました。離職理由のひとつとしてパワハラが原因と思われるケースは少なくありませんでした。「人間関係の悩み」と一言で片づけられない問題だと思います。人の悩みの八割は「人間関係」だといいますが、パワハラが人をどれだけ苦しめるものなのか、少しは理解しているつもりです。

未谷の痛みを自分事として理解してあげることは、人間としても大切なことだと考えます。

今回は、パワハラを契機として自己理解・自己認識について考えを深めていきます。

「転職の魔王様」はそのための格好のテキストになると思うのです。

未谷千晴。25歳。大学を出て業界大手の広告代理店「一之宮企画」に入社。2年11ヶ月勤務。入社と同時に営業企画部に配属され、クライアントへの広告の提案、進行管理、制作のディレクションに従事してきました。しかし体調不良で職場で倒れ休職し、そのまま退社しました。

原作では「年末から休職し2月で退社」と記されています。それからわずか一ヶ月足らずで転職活動ということになります。

結論からいえば、未谷の様子からは、まだパワハラから受けた精神的苦痛を克服できたとは言い難い感じです。また激務による肉体的疲労が癒えたのかも微妙です。その上、未谷は、そもそもそれがパワハラだったと認識していない可能性があるようです。

「自己管理が甘かった」とか「仕事する能力がなかった」とか、自分がその責任を負うような考え方をしているからです。

味覚障害になるまで肉体的にも精神的にも追い詰められた未谷は、叔母の落合がいうように、小さい頃からいわゆる「真面目でいい子」でした。未谷は面談の中で「体調管理ができなかった私の責任です・・・」とCAの来栖に話します。しかし果たして、体調管理ができなかった彼女の責任でしょうか?

未谷の回想シーンでは、上司である営業企画部の部長、竹原が、典型的な言葉の暴力をプロジェクト内で日常的に未谷にふるっていました。また彼女の能力を超える業務を要求し、サービス残業を強要してもいました。そして職場では、周囲はそれをみてみぬふりのようです。これは「いい職場」とはいえませんが、残念ながらそんな職場は無数にあるはずです。

職場におけるパワーハラスメントの定義を厚生労働省のHPから引用します。

同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」。

未谷は、就活で誰もがうらやむ大手の広告代理店に入社することができました。両親の反応も「いい会社に入ってくれてうれしい。鼻が高いぞ」というものでした。この両親の言葉には課題が潜んでいます。未谷の生育過程において繰り返し彼女に刷り込まれたメッセージ。多くの子供たちは親が喜ぶことをしようとし、親が喜んでくれることがいいことだと思うのも自然な成り行きです。

転職活動を開始し「シェパード・キャリア」から最初に紹介された大手アパレルメーカー(ジーブス・デザイン)宣伝部の求人に応募しようと思ったのも、母親が強く賛同したことが後押しになっています。未谷は来栖に「父も母も喜んでくれて。必要としてくれるなら・・・」と応募意志を伝えます。

未谷は「自分を必要としてくれる」会社を求めています。「高望みをするつもりはありません。どんな業界、どんな会社でもいいので・・・私を必要としてくれるところで、とにかくすぐ働きたい」と気持ちを吐露します。

「自分に価値なんかない。せめてまわりの期待には応えたくて・・・。私は必要とされる場で働きたいんです」。そう強く語ります。自分を必要としてくれる会社、自分が必要とされる場で働きたいと思うことは、いけないことでしょうか?

未谷はパワハラに遭っているにもかかわらず、会社から捨てられたと思い込んでいるのかもしれません。「自分に価値なんかない」という言葉が、今の未谷の「自己効力感」のなさを表現しています。

本当に、未谷には価値なんてないのでしょうか?

未谷のひたむきに仕事に取り組む姿勢。その優しさ、その礼儀正しさ、その素直さ・・・。

将来に大きな可能性を持つ素敵な女性です。そんな彼女は、自分に対する肯定的な信頼感を取り戻すところから、転職活動をスタートさせるべきだと思います。

そのためには退職に至った理由について明らかにしなくてはなりません。

未谷は退職の理由を転職の魔王様・来栖に問われて「体調をくずしてしまって・・・。でももう大丈夫です」と答えます。果たして本当に大丈夫なのでしょうか?

実際、未谷は部長の竹原からパワハラを受けていました。しかしパワハラを受けていたという認識は乏しかったように見受けられます。

パワハラを行う人間は、相手の人間的な尊厳を踏みにじります。相手を否定します。パワーハラスメントの定義にもある通り、職務上の地位と職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える人物です。悪いのはパワハラを行う人間で、その被害者としての未谷がいます。将来ある若い人間の可能性を精神面、肉体面で追い詰め傷つけたのは竹原の方です。私は竹原を許しがたい人間とみています。まず未谷はそれをはっきり認識することが第一歩です。

私の経験ですが、職場でパワハラをふるう癖のある上司を観察したことがありました。ハンターのように無意識に常にその獲物を探しています。そして対象がみつかると相手の急所を攻めてきます。対象者を否定する言動を行っては一時溜飲をさげます。しかしそれで満たされることはありません。酷い言動を繰り返します。満たされることのない不毛な営みです。

自分がパワハラの標的になった時は、観察し記録して、社内外の然るべき人に相談する道を薦めます。人事に異動を申し出る。労働基準監督署に相談する。結果として会社を辞めることになるかもしれませんが、ひとりで悩むのを止めて相談者と共に辛い時を凌いでいってほしいです。

キャリアコンサルタントや信頼できる友人は、悩んでいる人を「ひとりにしない」存在でありたいです。何もすることはできなくても、聴いてあげることはできますから。

転職の魔王様は、未谷の味覚障害から、パワハラの事実をつかんでいきます。

元の会社のパワハラをふるった部長を未谷とともに訪ねるシーンがありました。ショック療法でしょうか。

その直後に未谷は希望するアパレル会社の面接を受けに行くはずでした。しかし求職者心理として動揺した直後の面接は無理です。未谷は面接を辞退しました。小芝風花さんは鼻を赤くして痛みを堪えていました。かわいそうに。

このタイミングでアパレル会社の面接を受けることはできませんでしたが、本当はその会社の面接を受けた方がいいと私は思いました。面接を受けることによって想定外の出会いがあるかもしれませんから。

転職の魔王様・来栖嵐はこう語りかけます。

ー貴方の人生、このままでいいんですか?

そうでしょうか?

ー貴方の人生は、このままでいいんです。

そう云ってあげてもいいです。

時間をかけてもいいことがあります。幼年期から親から刷り込まれた価値観は簡単に再インストールできません。時間をかけて、いい環境の中で育んでいくべきことです。何年もかけて、時間を味方にして。自分自身の価値観や強い思いは、そうやって手に入れてほしいと思います。

さて、転職の魔王様:第1話から転職についての学びを簡単に整理しますと3点あります。

❶離職理由を自分でも深く理解できていない場合は少なくない。

❷自分ひとりで解決しようとは思わない。信頼できる人に支援してもらう時である。

❸(来栖のいう通り)転職の第一歩は、自分の置かれた状況を知るところから始まる。

さて、第2話は「あなたの本当の幸せはなんですか?」というタイトルです。

あなたの本当の幸せ・・・。どのような転職のドラマをみせてくれるでしょうか?

第2話:【転職の魔王様】早見あかりさん熱演32歳派遣社員:正社員幸せ宣言

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この記事を書いた人

大前 毅のアバター 大前 毅 国家資格キャリアコンサルタント
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