OODA LOOP。「ウーダループ」と読みます。
戦闘機パイロットの「意思決定のフレームワーク」のことで、次の単語の頭文字をつなげた造語です。
Observe ・・・「観察」
Orient・・・・「情勢判断」
Decide ・・・「意思決定」
Act・・・・・「行動」
この4つのステップをループさせ、激しい状況変化(戦闘機のドッグファイト:dog fight)に適合した判断を現場レベルで下し目的を達成する。その「意思決定スキル」をOODA LOOPといいます。
私がこのOODA LOOPを知ったのは、東洋経済新報社から翻訳書『OODA LOOP』が出た2019年のことでした。当時は経営書として「次世代の最強組織に進化する意思決定スキル」という謳い文句に惹かれてこの本を手に取りました。
読んでいるうちに、これは求職活動に応用がきくのではないかと思うようになりました。PDCAのサイクルは頭ではわかっていても、実は、一個人がPDCA(Plan Do Check Action)のサイクルを回そうにも回しようがない現実に直面していたからです。
PDCAのP、つまりPlanを立てている間に急速に事態は変化してしまうーそんな時代に私たちは生きているのかもしれません。特に求職活動ではいい求人に出会ったら即行動に移さなくてはなりません。瞬時の判断が求められます。
このOODA LOOPを発案したジョン・R・ボイドは傑出した戦闘機パイロットで、F-15やF-16といった戦闘機の最適戦術を数学的にモデル化することに初めて成功し、F-16の開発過程においても大きな役割を果たした軍事戦略家です。
戦闘機パイロットがコックピットの中で空対空の戦いの最中に着想をえた理論がOODA LOOPで、この意思決定のフレームワークを求職活動に応用してみようと私は考えました。
その本のp107にOODA LOOPの概念がありますので、ここに引用します。
▶観察(Observe):環境を観察しなければならない。
環境には自分自身や敵、あるいはその物理的、心理的、精神的状況、潜在的な敵味方が含まれる。
▶情勢判断(Orient):観察したものすべてが何を意味するのかについて情勢判断し、自らを方向づけなければならない。
▶意思決定(Decide):ある種の決定を行わなければならない。
▶行動(Act):その決定を実行に移さなければならない。つまり行動しなければならない。(引用おわり)
求職活動に当てはめるとこのようになります。
求人情報を含め自分の環境すべてを観察し、瞬時に情勢判断し応募を意思決定し書類作成し応募する(行動する)。求職活動にOODA LOOPはそのまま応用可能ですよね。
そしてO⇒O⇒D⇒Aというステップはむしろ例外的なものであるのだそうです。暗黙的コミュニケーション(阿吽の呼吸で、という意味)が成立していれば、観察(O)⇒情勢判断(O)⇒行動(A)のループを瞬時に回す方が理想的であるとしています。
「高速で回す」「アジリティ(機敏性:agility)」という言葉が本書では繰り返されますが、求職活動も瞬時に判断し瞬時に行動する機敏性が重要であることは間違いありません。
最近、就労支援においてこんな経験をしました。
クライエントは魅力的な求人情報にふれ瞬時に応募を決めました。ほぼ完璧な応募書類を作成し、e-mailで応募しようとしました。応募する直前に、クライエントにこんな問いかけをしました。
「求人を出している企業のHPはチェックしましたか?」
OODA LOOPの▶観察(Observe)に相当する作業です。
クライエントがその企業のHPをみてみると、応募職種の事業基盤はとても脆弱であるようにみえました。
それを知って驚いたクライエントは、もう一度求人情報を見直しました。すると、その情報は実は曖昧で希望とは異なった仕事内容かもしれないことがうっすらと見えてきたのです。
おそらくその求人情報に対して最初の思い込みからくる好意的な解釈をし、客観的な事実内容よりもイメージにひっぱられた理解をしてしまったということに思い至ったのです。
応募を取りやめたのは、正解だと思いました。応募して順調に選考がすすみ採用された場合、入職して初めてそれに気がつくようでは失う時間が多すぎます。
求人情報で勤務地から割り出した通勤時間、休日や残業時間の予測等は、生活に直接影響を与える要素ですが、それらを軽視して判断することも、“転職あるある”かもしれませんね。
このケースでは、最初の▶観察(Observe)で、企業情報をHPで確認すれば、おそらくその時点で速やかな▶情勢判断(Orient)を行えば、応募しないという▶意思決定(Decide)を下したに違いありません。
足元で、OODA LOOPが使える局面があることをあらためて思い知りました。
▶観察(Observe)はとても、とても重要です。
この本のp103に興味深いエピソードが載っています。
朝鮮戦争時(1950年代)に、なぜ性能が劣るF-86がMiG-15に圧勝したのかをOODA LOOPを発案したボイドは考えました。空中戦でアメリカ空軍の戦闘機が撃墜率10対1で圧倒していたからです。性能に劣るF-86の圧勝の秘訣は、実はこんなところにありました。
1)360度の視界を確保できた水滴型風防を装備していたことによって、パイロットは敵機をよりよく観察できた。
2)フルパワーの油圧制御により操縦桿の操作が容易だったこと。つまり機敏に動けた。
360度の視界と機敏性。
あなたの求職活動に、それを応用してみてはいかがでしょう?
観察(O)⇒情勢判断(O)⇒行動(A)のループを瞬時に回す。
やってみる価値は充分にありますよ。