理論というものが「天空を羽ばたく鳥」だとすれば、生きていて心に揺らぐ曖昧な思いは何にたとえたらいいでしょうか?
ぼんやりとそんなことを考えてみました。
もしもそれが「地を這う亀」であるならば、その徹底した低い視線でこの世界をみることができるでしょう。
その徹底して低い視線から見える世界を極めれば、いつしか天空を飛ぶ鳥の視線につらなるかもしれない。大勢の人に知の恩恵をもたらす理論は、きっと地を這う亀が見ていくような地道なフィールドワークの集積からしか生まれてこないと思います。
転職にむけて生じてくる心の揺らぎについて、考えてみましょう。
こんな順番で心の揺らぎが生じているように思います。
1)逡巡・迷い。
2)決意。
3)行動。
この3つの段階のどれもが重要ですが、一番最初の「逡巡・迷い」が、それ以降の「決意」と「行動」につながる訳で、その意味ではとても重要な段階だと思います。
「逡巡・迷い」ほど、曖昧で心揺らぐものはないかもしれませんね。
キャリアコンサルティングの世界では、この「揺らぎ」のことを「自己概念の揺らぎ」と捉えて、そこで揺らいでいる自分をみつめるお手伝いをします。揺らいでいるのは、今までの自分のものの見方、考え方であり、揺らぐような経験がそこにあります。その揺らぎの中から、みたくない自分を探り、新たな行動へとつながる意味を手に入れる。そんなプロセスをたどります。
その一連のプロセスは、「自己概念の成長」へと向かっていきます。
鮫(サメ)はいざ攻撃を決めた時に、もはや眼でみることをしないそうです。徹底的に獲物に食らいつきます。渚に打ち寄せられた材木に鮫の歯が刺さっていたりするのは、材木を餌と誤認識して、行動(攻撃)するからなのだそうです。
「決意」したのなら、徹底的に「行動」し、短期間でことを成就した方がラクでしょう。これが数か月に及ぶ長期戦になると消耗もするし、再び「逡巡・迷い」へのループをたどることになるかもしれません。それは悪いことではありませんが、充分「逡巡・迷い」を経験して事を成す準備をしておけば、短期決戦で内定をとれる確率はあがるはずです。
短期決戦で内定をとるために、時間をかけて「逡巡・迷い」をし、そこで準備するーそう考えていいかもしれません。
「逡巡・迷い」の時に、自分自身の中で揺らぐものを推し量る尺度(スケール)があるといいかもしれませんね。
ここでは<知・情・意>という哲学者カントの概念を使って考えてみましょう。
MindMapに単純化してまとめましたので、ご覧になってみてください。
「知」は知性・理性、考える心です。
「情」は感情・情動、感じる心です。
「意」は意志・意欲、現実を動かす心です。
あなたの心の状態は、この3つの尺度(スケール)で測ることができるとして、そのバランスがどうなっているかを内省してみます。
「逡巡・迷い」の時は、「情」が勝っているかもしれません。「知」は流されて漂流してるかもしれません。
「決意」の時は、「知」のチカラによって前進しているかもしれません。「意」のエネルギーもまた必要でしょう。
「行動」の時は「知」と「意」が総動員されているはずです。
夏目漱石がその小説『草枕』(1906年)の冒頭で表現した言葉によって、<知・情・意>は知られています。私たちは夏目漱石や『草枕』を手にとる機会が少ないかもしれませんので、ここに記しておきましょう。
山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
私たちの心の世界に揺らぎが生じやすい時。
転職にむかう時は特にそうかもしれません。なので、この<知・情・意>という尺度(スケール)をこれから少し意識して使ってみようと思います。
目的は、情に流されず、冷静に、目指す目的を果たすために、どうしていけばいいか?です。
TVには、本当にたくさんの転職エージェントのCMが流れていますね。そこで流れるCMには「逡巡・迷い」よりも「決意」「行動」が描かれることが多いように感じています。
「逡巡・迷い」は、TVCMと相性が悪いからかもしれません。
そして『内省などせずに、どうぞこっちにいらっしゃい』・・・そう語りかけてくるような気がしますが、内省って、いけませんか?