簡単に秋月誠さん(仮名)のキャリアをご紹介します。
現在31歳。二度の転職を経て、世界的に有名なアニメ系の会社の宣伝広告部門で主に動画プロモーション制作担当として活躍されています。大学では社会学を学び、卒業後大手のWeb制作会社に就職。Webクリエイターとして約2年間勤務して最初の転職をされました。大学の友人の紹介で新作ゲームのプロモーションを行う広告代理店へ入社。ディレクターとして2年間勤務した後、一昨年二度目の転職をされました。現職で満2年を経過したタイミングで、このキャリア面談を受けられました。
キャリアコンサルタント(以下cc):こんにちは
秋月誠さん(以下、秋月):こんにちは
cc:今日は秋月さんの今までのキャリアのお話を聞かせていただきたいんですけれども、最初に大学の就活のお話から聞かせていただいてもよろしいですか?
秋月:はい
cc:大学ではどのような学部で勉強されましたか?
秋月:社会学部で。大学生活では広く浅くといいますか。情報とかインターネットとかそういう領域にも興味があったので。
cc:その頃からインターネットにも興味を持たれて。
秋月:その授業も受けたりしています。就職活動は今思い返せばミーハー的な活動をしていました。
cc:ミーハー的?
秋月:見た目がかっこいいというか、華やかな。
cc:はい
秋月:華やかな感じのする広告代理店であったり、あとはモノづくり、何かを作る仕事をしたいなという思いもありました。何かにとらわれず制作会社というところからいろいろ変えていってWebの制作会社も受けていくような感じで。
cc:どのくらいの数エントリーしたんですか?
秋月:わりと感度が高いところから、自分が入りたいと思える会社を選んで応募するようにしていました。多分トータルで 50 社か70 社、行くか行かないくらいでしょうか。
cc:そうなんですね。何月頃から始めて、内定を取れたのは何月頃か覚えていますか?
秋月:もはや遠い記憶でして。
cc:遠い記憶・・・。なるほど。何ヶ月くらいか活動をしたっていう感じですか?
秋月:1 年は活動していないはずです。5月頃、ちゃんとした企業説明会とかを集中的に行くようにしていて、そこでめぐり合った会社の選考が半年くらい続いて、それと並行しながらいろんなところに応募しつつ、その弾を増やしていきました。最終的に弾が揃ったというか、選考中だった会社の最終結果と、追加で応募したところの選考結果の頭が揃いました。
cc:そうなんですね。どんな会社に内定をもらって就職を決めたんですか?
秋月:最終的には大手のWeb制作会社に内定をもらいました。当時自分の中で一番ちょっと行きたいなと思っていた、デジタル系専門の広告代理店がありまして、そこで“濃い社会人”になれるんじゃないかと。そんな憧れを感じながら、ここで働いていきたいと思いつつ、第 2 候補、第 3 候補には、教育等が充実しているところがありました。結果的にその一番憧れが強かったところは、経営陣から、職種はテクノロジストとしてどうですか?そう提案を受けて、ちょっと自分が想定していたものと違うかなと思いました。プロデューサーの会社だったんでプロデューサー志向ですとお話ししました。結果的にミスマッチで、そこから外れた時に、第 2 志望のところからちょうどタイミングよく、電話で内定連絡をもらいました。
cc:そうですか。
秋月:他の選考に行く途中、たしか駅のホームで携帯に電話がかかってきました。気持ち的には就活を終わらせたいなって。
cc:はい、それで就活を終えられた。大学生活を終えて、4 月入社ですね。その前に研修もあったんですか?
秋月:軽い研修はありましたが、基本的には4月からスタートしてそこから社内研修を、同期入社した 120 人と一緒に受けました。
cc:同期が多いんですね。
秋月:ええ。
cc:Web制作会社とお聞きしましたけれども、秋月さんはその会社が入社前にはどんな会社だという風に思ってらっしゃったんでしょうか?
秋月:入社前にイメージしていたこととしては、面接官の人もやわらかな雰囲気というか、若者よりの喋り方をしてくださっていて。
cc:年齢も近い方ですね。
秋月:ええ、Webの制作会社というと結構専門職なのかなっていう、文系ではないので。技術職の採用数は絞っていて、未経験の人を会社で一から育てていく。制作する人、ディレクションする人、営業する人を、 一から育て上げていくっていうところを会社の特色として押していたので安心感があって。横並びヨーイドン!で、社会人としてスタートする時に会社が手厚くフォローしてもらえるんだったらいいなと思いました。印象としてそこの教育研修制度の充実感を感じていました。
cc:それが安心感にも繋がったということですね。あの、秋月さんは最初に配属されたのはどんな職種だったんですか?
秋月:配属されたのは制作部門です。まったくイメージ通りでした。
cc:その会社は、いずれ転職をすることになると事前のお話で伺ってるんですけども、振り返ってどんな仕事をしてこられましたか?
秋月:数社、担当のお客様がいらっしゃって、そのサイトを預かって新しいホームページを制作、更新していました。今考えると、他の Web制作会社がどうなのかちょっと判りかねるのですが、工場のラインでやっていくような機械的な仕事が多くて、意外とクリエイティビティがない。やれることが限られていて、あとテンプレートで決まっていたりとか。
cc:なるほど
秋月:紙でチェックシートがあり、そこがデジタル的な会社なのに、アナログ的なところもありましたね。
cc:会社としては品質管理といいますか、品質を維持するっていう意図でそういうチェック項目など設けられてたんですね。
秋月:どうしても人為的な事故といいますか、ミスが起こってしまう。業務にはそういうものがあるのでヒューマンチェックを増やして失くしていこうということが基本的にあります。それでもやっぱり事故は起きるので、チェックが増えた結果、チェックリストの紙がどんどん長くなっていく。僕がいた2 年位の中でも項目が増えていくのを、まざまざとみていて(笑)。
cc:今2年っていう風にお話しになりましたけども、転職しようと思われた何かきっかけがあったんでしょうか?
秋月:これもまあ今考えたら少し世の中なめていたなって。120 人同期がいると当然辞めていくんですよね。
すごい勢いでやめていくんです。
cc:すごい勢いで。
秋月:はい。毎月10人という感じで。ある時は先輩を含めると20人ごそっと辞めるなんていうタイミングがあったりして。
cc:何かやめる事情っていうか理由というのはあったんですか?
秋月:同期であれば、自分がなんとなくこの仕事にむいてないというか。自分に合った仕事が他にもあるんじゃないか、とか。会社の雰囲気というか。そういうところが自分に合わないというような。先輩も大なり小なり同じような理由で辞めていったんではないかと思います。このままここにいて、いいのか?と。自分もその部類であったかと思います。
cc:同期が10人、20人と辞めていく中で、秋月さんはどんな思いで仕事なさっていたんでしょうか?
秋月:焦り、ですね。
cc:焦り。
秋月:自分はもともと動画編集が出来ました。みんな横並びで仕事をやっていく中で、それでも出来ることに特徴がでてくるんです。自分だけ撮ったり編集したりするようになりました。
cc:仕事として扱うように?
秋月:そうですね。君はできるから、これを、と任せられるようになって。それはありがたかったのですが、それが業務の3割、多い時は5割とあって。
cc:ほお
秋月:それって一年くらい経過すると、横並びで出来ることに差がついてくる。
cc:そうでしょうね。
秋月:本来、HPをつくる会社ですから、これくらいまでは出来るだろうというところに、ある時自分は追いついていない。
cc:なるほど
秋月:みんながやっている間に、自分は別のことをやっている。少しづつ、少しづつ、遅れをとっていく。
そんな間に配属がかわり、奇しくも自分の母校の大学のHPを更新する部署に異動になって
毎日ルーティンワークで更新していく、誰でもできてしまうような仕事・・・どうなっていくんだろうな?自分は・・・。
cc:なんとなく将来に・・・
秋月:そんな中で、人が辞めていく。必然的に自分も先輩になり、後輩もついてくる。今度は教えなければならない。自分は何を教えられるだろう?
cc:そうなんですねぇ。お仕事の方はどうなんですか?かなり激務だったんですか?
秋月:激務かというと割とそんなに忙しくはなかったと思います。自分の仕事が片付くと、何か残っている仕事はないですか?というのを聞いて回るという、割と昔気質(かたぎ)な。
cc:なるほど
秋月:終わったらとっとと帰るっていうよりも、先輩とかに何かありますか?って確認する感じで。担当するものによって忙しさがまちまちなので、春は割と繁忙期でバタバタしていたという記憶があるんですけど、手持無沙汰だと思う時もありました。
ただ、扱うものが教育機関とか銀行とか硬い内容で、かつページ数が多いんです。ページ更新も結構多かったので。そうなんですね。きたぞっていうっとドサッと入る。
何百ページ、何千ページ更新して、それを印刷して、ひとつずつチェックして。
cc:なんか出版社の印刷っていうか、編集みたいな感じですね。
秋月:わりと紙を刷るっていう感じで。
cc:なるほど。
秋月:紙でチェックして、チェックがもれて、始末書を書く。みたいな(笑)。
cc:そういう仕事を2年ぐらいされて、転職を考え始めたのはどんな感じですか?きっかけとなる出来事があったのでしょうか?
秋月:今思えば、事件でしたが・・・(笑)。会社を辞めた方から、かつての先輩から連絡があって、会社を興していて。
cc:起業していて。
秋月:動画の仕事があるから、よかったら来ないか?と。
cc:よかったら来ないか?これ、ヘッドハンティングですか?
秋月:当時の僕は、本当にシンプルに嬉しかったですね。得意分野で来ないかって誘われて。不安も感じていたので、割と迷わず会社を辞めました。
cc:迷わず。
秋月:行きますって。
cc:行きます・・・。で、その会社に入られたのですか?
秋月:入りませんでした・・・。
(つづく)