シュロスバーグは「転機への対処法」は強化できることを提唱した

転機」というものはある意味で、捉えがたいものですね。

しかし「転機」の只中にいる人にとっては、自分がまさに「転機」に翻弄されていることがわかるものです。どうしてわかるのでしょうか?

それは「転機」の時期を過ごしているときは、とても「居心地が悪い」感覚があるからです。それは混乱であり、不安とともに明日なき明日を生きるような感覚だからです。痛切な痛みや孤立感の中でどうしたらいいのかわからぬまま、リラックスした寛ぎの時を過ごせる方法がもしもあったのなら、私はすぐにでも教えを請いたいと思います。

しかし、流されるばかりでいいかというと、それは違います。

難破しかかっても、難破しないように舵をきる必要があるのです。「転機」が古代の通過儀礼のように「死と再生の旅」であるならば、その旅の歩き方というものがあってもいいでしょう。

ナンシー・K・シュロスバーグの転機のキャリア理論を読み込んでいくと、「転機についての対処法」について再整理することができることに気づきました。「転機への対処法」に取り組むことによって、難破しない航海術を身に着けることに一歩近づけるように思います。

ここでは「転機への対処法」を鳥瞰します。

おそらく人生においては困難な時にあっても常に何らかの方策があって、たとえ「万事窮す」と思える時にも、何らかの対処法を人間は編み出して試みてきたに違いありません。

ここではシュロスバーグの理論から、「転機への対処法」を学びたいと思います。目的はこの対処法を使うことによって、少しでも「転機」における旅のリスクを減らしていこうというものです。

対処能力」「対処そのもの」「支援システム」の3軸でみていきます。シュロスバーグの「転機への対処法」の骨子をMindMapにまとめてみました。ご覧になってみてください。

【シュロスバーグの理論】:日本マンパワー「キャリアカウンセリング養成講座」の理論TEXTに基づいて作成しました。

それでは順にみていきましょう。

■対処能力4つ

1)肯定的か?

例えば同じ失業をした人でも、失意の底から抜け出せない人もいれば、そこから立ち上がっていける人もいます。その人のリソース(内的資源)によって事態の捉え方は変わっていくのです。スポーツ観戦で窮地から挽回し勝利する局面をみることがありますよね。

肯定的にとらえているか?否定的にとらえているか?それで人生が変わるのは事実です。否定的、悲観的と、肯定的。どちらをあなたは選びますか?

2)コントロール感

転機の渦中にあって、自分の人生をコントロール(制御)できると考えているか?それとも宿命的・運命的としてあきらめるのか?どちらをあなたは選びますか?

3)対処スキル

ストレス解消の仕方や、意思決定や行動法を学んでいるのか?どうか?あるいは対処スキルを学ぼうとするか?そのまま悲嘆にくれるのか?あなたはどちらを選びますか?

4)経験値

失業を経験したことのない人と、何度かの失業を乗り越えてきた人と、どちらが失業から立ち直りやすいでしょうか?経験して過去の経験から学んできた人の方が、転機にうまく対処する方法もまた持っていることが多いようです。

■対処:2段階

1)リソース/4つのS

転機を乗り越えるためのリソースには「4つのS」があります。①状況:Situation ② 自己:Self  ③ 支援:Support  ④ 戦略:Strategy 。転機における自分の立ち位置を把握することによって事態を好転させる行動がとりやすくなります。

2)変化の受容

転機を乗り越えるための戦略を立てて、自分の弱いリソースを強化していこうとするか?それとも流されていくか?どちらをあなたは選びますか?

■支援システム

このような支援が見込めるならば、転機の困難さはさらに下げることができます。

1)人

心理的に支えてくれる家族や友人がいる人は、孤立している人よりも難局を乗り越えやすいです。あなたの応援団を今一度確認してみて、その人たちとのヒューマン・ネットワークをセーフティーネットにしていきましょう。

2)もの、金

お金があるかどうか?失業した時に最も重要なリソースのひとつです。貯金は?生命保険を解約したら現金をどれくらい確保できるか?雇用保険は?着るべき服、履くべき靴。いうまでもありませんがとてもとても大切なものです。

3)支援機関

公的機関、支援団体。HWをはじめとして行政のセーフティーネットを活用することによって、支えられる局面がみえてきます。

これら「転機への対処法」を知っていることによって、同じ転機であっても、乗り越え方が変わってきます。このようなアプローチは、ある程度冷静に理性的に取り組めるステージで手を打っておく方がいいでしょう。本当に追い詰められてしまうと、人は冷静に理性的に物事に対処するのは難しいものです。

自分の体験から話します。

一冊のノートを用意しました。そこに思いつくいろいろなことを書き出して、その対処法を考え書き記していきました。実際に実行しなかったことでも書き記すことによって安心できたのを覚えています。預貯金、保険を解約して得られる現金、削れる固定費等々、一生懸命書き記し具体的に現況を把握しようとしました。「どれくらい戦っていけるのか?」。それはお金によって判断できるもののひとつです。

そのようなことは1~2時間でできることでした。しかしそれをしなければ不安も混乱もそのままで、何週間も続いたことでしょう。

今では懐かしい思い出ですが、そのようにして窮地を乗り越えようとしたかつての自分を「よくやったね」と誉めてあげたい気持ちです。

転機への対処法」は、自分自身でできる処から取り組んでみることをお勧めします。それによって難局が少しでも改善されることを実感できることでしょう。

日常生活で孤立していると感じることが多ければ、支援システムの3)支援機関の強化を図ります。努めてHW等の支援機関の利用頻度を上げます。定期的に訪れ相談窓口を活用することによって、自分のことを言葉で表現するといいですよ。

そして少しでも自分が寛げる場所を探してみてください。

カフェ、図書館、ショッピングモール。花屋さんの店頭で、季節の花々を眺めることもまた楽しいことですよ。

是非試してみてくださいね。

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この記事を書いた人

大前 毅のアバター 大前 毅 国家資格キャリアコンサルタント
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