100年時代の人生戦略:マルチステージの人生 3つの生き方・働き方

この著書『ライフ シフト100年時代の人生戦略』には、これからの人生設計を考える上で、示唆に富む情報が豊富に盛り込まれています。超長寿化社会への移行とその変化は、想像以上に私たちの人生を変えるという確信を持ちました。特に30歳を前後する若い世代には必読の書といえるでしょう。今までの人生設計ではこれからの時代の激変に対応できなくなるからです。

しかしこの本をしっかり読むには相応の覚悟が必要かもしれません。タフな読み物だからです。

まずは書店で手に取ってみてください。

新しいシナリオ」と題された第5章には、1971年生まれのジミー(現在40代半ば)と、1998年生まれのジェーン(現在20代半ば)、ふたりの人生のシナリオが描かれています。書店で、ここをみることをお勧めします。

特に30代のあなたにはジェーンの人生のシナリオ」(p196~)をお勧めしたいです。

シナリオに4.0と5.0の2種類あります。特にジェーンの5.0シナリオ(p201~)がとても面白いです。85歳で引退するまでのジェーンの壮大で波乱万丈な、しかし幸福と希望に満ちた人生を辿ることができます。

わずか十数ページに衝撃を受けて、この本を購入してくださるかもしれません。それくらい長寿化による衝撃は凄いということを、ジェーンの人生のシナリオによって具体的に感じとれることと思います。

労働市場の激変、現有スキルの陳腐化に対する再投資の必要性。そして老後資金をいかに確保していくか?

それらが具体的に描かれます。

老後資金にいずれ人は頼ることになります。老いて労働市場から引退する前後にその時は訪れます。若い頃は、そのことにリアリティはありません。「なんとかなるだろう」と思っているのが大半ではないでしょうか?

年老いて、そのときにはもう打つ手がない老後資金・・・。資産は時間を味方につけることでしか増やすことはできせん。「なんとかなる」人にならなくてはなりません。そして今ならばみんなが備えることができることです。

このシナリオに現実味があるのは、この老後資金を見据えつつ、現役時代のそれぞれのステージで金銭的資産を年間所得の何パーセント貯蓄する必要があるか?ということにまで注意喚起するからです。人生を通じて家計が破綻しないように計画する視点は、当然ながら極めて重要です。

今までは、ほぼ老後資金(金融資産)だけの人生設計ですんでいました。教育⇒仕事⇒引退の古いステージの時代では予測可能性は高く備えあれば憂いなしでした。今までの古いステージでは労働環境の激変を想定していませんでした。

100年近く生きるとなると、「生産性資産」「活力資産」「変身資産」、この三つの「無形の資産」の増減についても視野にいれることを提言しているところにリアリティがあります。

金融資産」と「無形の資産」(生産性資産活力資産変身資産)のポートフォリオを組むことは、これからの人生設計に有効な考え方だと思います。

生産性資産や変身資産にはリスキリングに要する資金が必要です。リスキリング中は、労働から離れる間、生活資金が必要です。備えなければ学ぶこともできません。超長寿社会を希望をもって生きるためにはsome moneyが必要です。

その対極にあるのが『オンディーヌの呪い』です。この本の冒頭(p20~)でこの『オンディーヌの呪い』が紹介されますが、長い人生を「一瞬の休みもなしに働き続ける」ことを、私たちは如何にして回避していけるのか?

それが著者たちの執筆動機にもなっていると私は感じました。

ここで3つの生き方・働き方について、簡単に整理してみましょう。

超長寿化社会にあって「マルチステージの人生」を歩まざるをえなくなった私たちは、人生の所々で必要に応じてこの3つの生き方のいずれかを選択することになるだろうと予測しています。

出典:『ライフシフト100年時代の人生戦略』p219~p260:発行所 東洋経済新報社

3つの生き方・働き方を要約します。

エクスプローラー(探検者)

日常の生活や行動から自分を切り離して人生の旅にでます。様々な経験をし、その経験について自問し「みずからの価値観を問い直し、自分のアイデンティティと役割をじっくり考える」(引用:p234)時です。変身資産への投資の位置づけになります。

インディペンデント・プロデューサー独立生産者)】

「ひとことで言えば、職を探す人ではなく、自分の職を生み出す人」(引用:p239)です。起業家とは異なり「組織に雇われずに独立した立場で生産的な活動に携わるためにまとまった時間を費やすことが大きな意味をもつ」(引用:p240)と述べられています。「素早く実験を重ねて、なにが有効で、なにがうまくいかないかを学んでいく」(引用:p240)時です。「プロトタイピング」:「試行錯誤しながら未来を探索する活動」「試作品の作成・修正」(引用:p241)が推奨されます。

生産活動を通した学習が重要で、安心して失敗できることが許容されます。生活費をまかなえる位の収入を目的とします。これもまた変身資産への投資の位置づけです。

ポートフォリオ・ワーカー

NPO、会社での仕事、趣味、地域コミュニティ活動等「さまざまな活動に同時並行で取り組みたい時期」(引用:p249)の生き方です。人生の土台を築いた人たちがその対象者になると予想されています。

エクスプローラー(探検者)」「インディペンデント・プロデューサー独立生産者)」も「ポートフォリオ・ワーカー」も、今は想像上の生き方・働き方であって、既存の職業や働き方ではありません。これについて筆者たちが真剣に考えて提示した概念といえます。

従って、読んでいて抽象的・概念的であることは否めません。ぼんやりとした像がアウトフォーカスでみえる、そんなパートでもありました。

しかしこの生き方・働き方を実体化させていくのは、未来を生きる私たちです。

きっとわくわくドキドキした人生の体験が待っているに違いありません。人はいくつもの転機を乗り越えていくことになります。そのために私たちは変身資産を育むことに対して自覚的であらねばなりません。

この「3つの生き方・働き方」のパートは、このブログ『転機の技法』において、テーマとして追求してきたことに重なる部分が多くありました。

この『ライフ シフト100年時代の人生戦略』を、私は自信をもってお勧めしたいと思います。

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この記事を書いた人

大前 毅のアバター 大前 毅 国家資格キャリアコンサルタント
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