映像の世紀 バタフライエフェクト バブル ふたりのカリスマ経営者

1995年に始まったNHKのドキュメンタリー番組「映像の世紀」は、今「バタフライエフェクト」という副題を与えられ、新シリーズとしてOn Airされています。「バタフライエフェクト」という言葉をNHKは次のように定義しています。

蝶の羽ばたきのような、ひとりひとりのささやかな営みが、いかに連鎖し、世界を動かしていくのか?」(引用終わり)。毎回「連鎖」、すなわち「関係性」が「バタフライエフェクト」を構成する上での鍵となっています。

私は昔から「映像の世紀」のファンでした。「バタフライエフェクト」のシリーズもほとんど観ています。歴史を学ぶ喜びは多々ありますが、ある時代を生きた人々の実相を、ダイレクトに映像により考察できることが私には魅力です。文献では表現しえない人物の表情、声、エモーション。つまり人間の息遣いそのものが映像を通して把握できるからです。

この記事では、「映像の世紀 バタフライエフェクト」を観て「歴史を学ぶこと」について私が考えたことを記したいと思います。

今回は、私が生きてきた時代、バブルが舞台です。

初回放送日:2024年10月21日。番組名:「バブル ふたりのカリスマ経営者」。

映像には、バブルの熱狂が如実に描かれています。人々の浮かれる様は愚かしくも切ないです。その後訪れるバブル崩壊の爪痕を知る私たちから見れば・・・。しかし私もまたその熱狂の最中におりました。私もまたある意味で浮かれていたのです。切ないです。

NHKの番組解説には次のように記されています。

「80年代後半の日本のバブル期、株式市場の時価総額は600兆円超、一人あたりのGDPはアメリカを抜いた。この時代に大きく業績を拡大させた2人の経営者がいた。ダイエーの中内功(功は〈たくみへん〉に刀)とセゾングループの堤清二中内は、所有する不動産を担保に借り入れを増やし店舗数を拡大していく。は、洗練された商品で新しい消費文化を築く。しかしバブル崩壊後、2人の運命は暗転する。バブルの魅惑と罪の物語」。

とても興味深くこの「バブル ふたりのカリスマ経営者」を私は観ました。繰り返し3回観ました。

自分が生きた時代。あのバブルの最中に、時代の頂点を極めたふたりのカリスマ経営者がどのように生き、そしてどのように敗れていったのか?それを映像を通して見詰めることができました。

バブルの時代、西にダイエーの中内氏が、東にセゾングループの堤氏がいて、お互い相まみえることはなかったもののお互いを意識し、時代の頂点に君臨したふたりの経営者。そしてバブル崩壊後、そのすべてを失った経営者。彼らの肉声、表情、栄光と挫折が映像で語られます。

人間の運命は、かくも非情であることか。人間はいかに時代というものに翻弄されていくものなのか。その有様に、言葉を失う思いです。

自分もまたバブルに翻弄され、アップダウンを経験しました。そんな自分にとって、帝国の頂点を極め、それらが瓦解し、ほぼすべてを奪われていったふたりの経営者の姿を視るとき、彼らは決して無縁な存在ではありません。

ここで、ふたりのカリスマ経営者の歩みについて簡単にまとめてみました。

ダイエーの中内氏

[高度経済成長期]

価格破壊で一世を風靡。大量販売システムによる消費者のための店づくりを志向。店舗数を拡大し、大量仕入れによる値引きを実現した。不動産の含み益を背景に、積極的な出店戦略を展開。

[バブル期]

売上目標を4兆円に設定。コンビニ、外食、海外事業など多角化。福岡ダイエーホークス買収、ドーム球場建設など巨額の投資。神戸に巨大商業施設を建設するも、立地の問題から集客に苦戦。

[バブル崩壊後]

売上高減少。阪神・淡路大震災で多大な被害を受けた。消費低迷で経営悪化。銀行から債務返済を迫られる。グループ縮小、赤字店舗閉鎖。2001年、ダイエーの経営から退く。2005年、福岡ダイエーホークスを売却。その数か月後、83歳で死去。

セゾングループの堤清二氏

[高度経済成長期]

西武百貨店を「文化の香り」で差別化。TVCMコピー「おいしい生活」。美術館を併設、ライフスタイル提案型店舗を展開。渋谷に西武百貨店、パルコを出店し、街のイメージを一新。西武グループ150社以上、売上高4兆円を超える巨大グループに成長させる。

[バブル期]

不動産開発、リゾート開発に積極投資。尼崎に巨大商業施設「つかしん」を建設するも採算性悪化。北海道に「サホロリゾート」を開発するも赤字に転落。

[バブル崩壊後]

高額商品の売れ行き不振で売上高半減。つかしん、サホロリゾートの業績悪化。銀行から1兆円を超える融資の返済を迫られる。2000年、個人資産100億円を売却し負債処理に充当。セゾングループを解体。2001年、セゾングループ消滅。経営から退き、作家活動に専念。バブル期の過剰投資を後悔。2007年、84歳で死去。

神はすべてを与え、そしてすべてを奪っていった。

そう表現しても、不適切ではないと思います。

番組の中で、ダイエーの中内氏が訪米中、ケネディ大統領のスーパーマーケットの役割に対する賞賛の言葉に、強くインスパイアされたことが描かれます。

晩年の堤清二氏が、父親・堤康次郎氏の銅像を訪ねて京都に赴き、亡き父の像を見上げ佇む場面にも万感迫るものがありました。

そして2005年。中内功氏と堤清二氏は密会されたことが明かされます。おふたりが亡くなられる直前のことでした。

「バタフライエフェクト」の「連鎖」と「関係性」。それは、中内氏=堤氏、中内氏=ケネディ大統領、堤氏=父親・康次郎氏。そのような「連鎖」と「関係性」が構成上みてとれます。

バブルを生きた私も、そこで大いなる高揚と大いなる失墜を経験しました。

しかしながら人生は続き、なんとか今日のこの日まで歩んできました。その過程で、このふたりのカリスマ経営者のつくりだしたものに少なからず恩恵と影響を受けてもきました。

だからこそ、ギリシャ悲劇のようにバブルの歴史に刻まれることとなった、このふたりの経営者の栄光と挫折の物語は胸に響くものがありました。

どこで道を間違えたのか?

それに言及されるシーンがあります。ささやかな呟きのような言葉として、気づく方は気づかれたでしょう。

すべての人間が有している人間としての脆弱性。欲望と理念と志の相克。時代が渦を巻き変わってゆくことの恐ろしさ・・・。さまざまなことを考えます。それを私は少しずつ今から考えていきたいと思います。

生きるということは、あるひとつの時代の時間のなかでなされます。

それを他人事として語ることはできません。

私も、そしてあなたも、今を生き、それは今の時代の中でなされていくのです。良き人生を送ろうとすれば、歴史から離れることはできません。

そのようなことを、この「映像の世紀」を観た私は感じたのでした。だからこそ歴史を何らかの形で学ぶことは、自分の人生を良き方向へと向かわせるチカラとなるはずだと考えます。

あなたは、どのようにお考えでしょうか?歴史を学ぶということについて。

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あなたの人生を輝かしいものにするために。

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この記事を書いた人

大前 毅のアバター 大前 毅 国家資格キャリアコンサルタント
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