私は「ライカ」という言葉に反応してしまいます。戦場カメラマン、ロバート・キャパ(1913-1954)の報道写真が好きで、キャパの自伝『ちょっとピンぼけ』は青春期の愛読書でした。
スペイン市民戦争、ノルマンディ上陸作戦、そして戦後の平和が訪れて、キャパの最後はふいに訪れます。第一次インドシナ戦争の最中、キャパは地雷を踏んで亡くなりました。キャパの最後に撮った写真は平凡な風景で拍子抜けするものでした。平地を散開した兵士たちが前進していく風景だったと記憶しています。
同じくベトナム戦争に従軍しピュリッツァー賞を受賞した故・沢田教一カメラマン(1936-1970)の伝記は『ライカでグッドバイ』でした。
「ライカ」は特別なキャメラです。ドイツのメーカー「ライカ」が映像の世紀に残してきた人類の記録。それは、今では私たちの記憶となって自分の歴史観の中に刻まれています。
そんな「ライカ」のつくったスマートフォンが出て、それを使ったプロモーション動画を今朝観ることができました。
大阪の街。その中で静かなドラマが進行していきます。男と女がいて。怪しい男が電話ボックスの中にいたりして。
バス車内の空気感。空のひろがり。いくつものドラマが大阪を舞台として進行しています。
光と影のたわむれ。カラーとモノクロームのたわむれ・・・。
音楽は、ドビュッシー。アラベスク 第1番 ホ長調。
こんな動画をみていると、街にスマホを手にして出て行って、この世界を撮ってみたくなる気持ちになりました。
自分は何に倦んでいるのだろう?
自分を忘れて、世界をあるがままに見てみたらどうだろう?
海外に行かずとも、遠い世界へ行けるかもしれない。
そこで一旦自分を空にして、日常へと戻っていくのは、とても素敵なことかもしれません。
そんな思いにさせてくれる動画は、そうないと思います。みなさんに観ていただきたいと思い、ここに紹介します。
縦長の映像の世界を、通常の横長の映像で描いた動画がもう一本、ありました。
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探してみると、ライカ100年の歴史を描いた2分の動画が、カンヌ国際広告祭2015年受賞作品としてありました。
もちろんロバート・キャパの歴史に残る1枚も再現されていますよ。