映画『SONG OF EARTH』。2024年9月20日に日本で公開された北欧のドキュメンタリーです。私はその予告編を今、観たばかりです。
ノルウェーの山岳地帯、オルデダーレンの大自然。そこに暮らす老夫婦を捉えたこの映画の予告編は秀逸でした。
監督は老夫婦の娘であるマルグレート・オリン。製作総指揮を北欧の大女優リヴ・ウルマンと名監督ヴィム・ヴェンダースが担っているとのこと。私はリブ・ウルマンの名とヴィム・ヴェンダース監督の名に強く反応しました。
これは観たい。
私の手元には限られた情報と、この予告編映像があるだけですが、なんとかして劇場で観たいです。
大きなスクリーンに映し出されるフィヨルドを望む風景の中に、わが身を置いてみたいと思います。
人生の意味、しあわせの意味、夫婦の在り方などについて、何かを受け取れる気がしますので。
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ということで、劇場で『ソング・オブ・アース』を観てきました。9月23日、3連休の最終日でしたが客席に観客はまばらでした。そうでしょう、この映画の存在をほとんどの人は知らない訳ですから。この映画を「クレヨンしんちゃん」を観に来た家族連れと同じシネコンで鑑賞できる日本に、乾杯!です。
この映画に流れている時間は、別に観客におもねることもなく、悠久の時間の中にあります。氷河が突如崩落していく大自然を前にした神の眼で描かれているようです。ドローンによる映像が秀逸です。
北欧の大自然の美しさとは裏腹に、厳しく過酷な大自然の春夏秋冬が描かれ、その中で生きる84歳の父(マルグレート・オリン監督の父)、そして母のダイアローグで語られる構成です。
「私は84歳になるらしい。しかしそれが何だ?」。
映画の中で彼はそのように語ります。
これはファミリー・ムービーでした。女性の監督は、実の父親と一年かけてフィヨルドを望む風景の中に身を置いて撮影を媒介して共にあったこと、父親と母親の心情を映像に収められたこと、そしてファミリーの歴史(自然災害の悲劇と家族の悲劇)を織り込めたことに、深い意味があると思いました。
氷河が崩落する様に、命が途絶える様を私は重ね合わせて観ましたが、観客にその解釈は委ねられています。
シアターの中で悠久たる時間の流れの中で、人は何を感じ、何を想うのか?
それは観客に委ねられています。
従って、これは観る人を選ぶ映画なのでしょう。私は、観てよかったです。
2024年の夏の終わりに、このような映画に出会えたことをうれしく思います。
84歳の父親の眼にうつる故郷ノルウェーの山岳地帯、オルデダーレンの大自然。そして自然の中で響く様々な音響。映画という媒体のチカラによって、あなたは追体験できます。
悠久の時間の中で、しばし瞑想するような映画的時間でした。
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映画を観終わってしばらくして、ネットの記事である事実を知りました。
本作品の原題「fedrelandet」(ノルウェー語)は「父なる国」、あるいは「祖国」という意味だそうです。
娘である監督は、父の王国を神の視点で一年間見つめ続けました。それがこの映画です。