人生の転機の渦中にいるとき、「不安」な思いを感じない人はいるでしょうか?失業した人、会社で難しい状況に置かれている人のキャリアカウンセリングをしていて、クライエントの内面に「不安」な思いが揺曳しているように感じられることは少なくありません。沈んだ表情やとぎれとぎれの言葉の向こうに、不安が滲み出ているように感じられます。程度の差こそあれ、人は不安な思いを抱くことが少なからずあります。
その不安は、どこからやって来るのでしょうか?
多くの場合「どうしていいのかわからない」という思いから、不安が増幅していくように感じられます。無収入になって経済的な不安に囚われる人々も多くいます。「これからどうしていけばいいのだろう・・・」。そんな時、思考はぐるぐると堂々巡りしたりします。流れていく思考を自分でコントロールするのはとても難しいことです。
考えてみれば、「不安」を感じることはとても自然なことでもあります。しかしその「不安」を“常に育んでしまう”ような回路ができてしまうと、厄介なことになっていきます。「不安」に長期間さらされると、メンタル不調に陥る場合が多いです。その不調がある一線を越えると健康な日常生活を脅かすことになりかねません。カウンセリングをしていて、メンタルクリニックの受診をおすすめしたり、同僚の臨床心理士や公認心理師へリファーすることも数限りなく経験してきました。そんな時、本人にとって辛く不快な時間を過ごすことを、その手前で食い止められたらいいのだが、といつも思います。
今、私が考えるのは、健康な日常生活を維持するにあたって、どうすれば不安を手なずけることができるのか?ということです。
TVやネットのニュースをみていると、そのニュースのほとんどは「不安」を掻き立てるものですね。
娯楽の世界においても、ハリウッド映画は「不安」や「恐怖」を商品化して世界市場を制覇したという話を聞いたことがあります。「不安」や「恐怖」に対してもお金を払って鑑賞するのが人間存在の不思議なところといえるでしょう。
哺乳類である私たち人間の脳の中には「偏桃体」という器官があり、「偏桃体」という器官が不安や恐怖という情動を司っているのだそうです。その「偏桃体」は脳の中の側頭葉と呼ばれる部位の内側にあります。この部分で不安や恐れといった感覚をつくりだしていることが医学的研究によってわかっています。
そこで、こんな考え方をしてみました。
今までは、漠然と「不安」に感じていることを、自分の脳の中に在る「偏桃体」が反応していると考えてみました。
「不安」というムードが、自分の脳の中に在る「偏桃体」の反応として生じていると考えてみると、少し「不安」を客観視してみれるような気になりました。得体のしれない「不安」が、自分の脳にある「偏桃体」によって生じているという認識は、私にとっては新鮮でした。
そんなことを考えるようになったのは、最近、「偏桃体」について興味深い本を読んだからです。
『「脳が不快なこと」をやめれば健康になる (サンマーク出版)』
著者である石川陽二郎氏は、先端医療の「陽子線治療」と地域医療の双方で活躍されている医師です。
「偏桃体」は外界からの刺激によって反応するので、「偏桃体」を過敏にしない工夫が不安イメージの払拭に有効であるとの主張がなされています。偏桃体が過敏になると自律神経は乱れ、免疫力を低下させることにつながるそうです。
外部からの刺激というのは、視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚の五感ですが、医学博士の石川氏は三つのセンサーに分けて説明しています。外部からの刺激を直接受ける場所としての三つのセンサーは次の通りです。
❶皮膚センサー ❷「目、耳、鼻、口」などの感覚器官センサー ❸腸センサー
これらのセンサーが「快」と判断する刺激を増やし、「不快」と判断する刺激を減らすことが、偏桃体を整えることにつながるのだそうです。
「不安」を手なずける方法について、この『「脳が不快なこと」をやめれば健康になる』は参考になると思い、紹介させていただきました。
TVやネットでのニュース情報の接し方、朝日を浴びることや、自分なりの不安を手なずける方法について、私自身も応用し試してみようと思います。
自分の脳を「快」に保っていきましょう。